プロにきく活用術
税制優遇のあるNISAとの違いは?
金融資産全体の中での位置づけを考えうまく使い分けよう
個人型確定拠出年金は税制上の優遇措置のある制度ですが、60歳まで引き出すことができません
「老後資金をつくる」のが目的であれば、個人型確定拠出年金や企業型確定拠出年金を優先したほうがよいでしょうし、それ以外の用途を考えている場合には、NISA(少額投資非課税制度)を活用するということになるでしょう。もちろんどちらか一方にする必要はなく、うまく使い分けで「併用する」こともできます。
では、NISAはどう活用すればよいでしょうか。まずは、NISAのおさらいをしましょう。
- 非課税期間が5年である
- 他の口座(特定口座など)と損益通算ができない
- 枠の再利用ができない
NISAも株式の配当金や株式投信の普通分配金、売却したときに利益が出ている場合は非課税になりますが、このような縛りがあります。
とくに(1)非課税期間が5年で、それ以上長く保有しようとすると「新たなNISA口座にロールオーバーする」か、「特定口座などの課税口座に移換する」ことになり、移すときの取得価額に変わります。制度自体がやや複雑ですし、投資信託や株の価格が下がっているときに課税口座に移すと、むしろ税金をたくさん払わなくてはいけないケースもあります。
そのため、単純に期待リターンの高い商品を割り振るにはリスクもあります。そこで、「金融資産全体の中でNISAをどういう目的・位置づけで利用するのか」をきちんと考える必要があるでしょう。例えば、「確定拠出年金に加えて、中長期で資産形成のコア(中核)になる商品に振る」「それほど値動きの大きくない(低リスク)のものを割り振る」「資産形成のコアにプラスするような、サテライトとして使う」等々です。制度や非課税期間が恒久化されてシンプルになれば別ですが、いまは万人にあてはまるNISAの使い方はないと思います。
また、金融庁は「平成29年度税制改正要望」で、新たに「積立NISA」の導入を考えているようです(現行NISAとの選択性で年間上限額は60万円・非課税期間は20年)。既存のNISAについても、非課税期間終了後のNISA口座へのオーバーや課税口座への移管時に取得価額が変わるというルールの見直しも要望しています。NISAについてはこうした動きもチェックしつつ、活用法を検討する必要がありそうです。
個人型確定拠出年金とNISA 課税口座の特徴
確定拠出年金 | |||
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企業型 | 個人型(※1) | ||
年間投資額の上限 |
|
|
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累積投資額の上限 | なし | なし | |
税優遇 | 拠出時 | 非課税 個人が出した掛金は全額「所得控除」 |
非課税 掛金は全額「所得控除」 |
運用時 | 非課税(※2) | ||
給付時 | 課税(税制優遇あり) | ||
売却した枠の再利用 | できる | ||
他の口座との損益通算 | できない | ||
引き出し | 原則60歳まで引き出し不可 | ||
利用できる人 | 60歳まで(※3) |
NISA | 課税口座 | ||
---|---|---|---|
年間投資額の上限 | 120万円 | なし | |
累積投資額の上限 | 600万円(※4) | なし | |
税優遇 | 拠出時 | なし | なし |
運用時 | 売却益、配当・普通分配金が非課税 | なし (譲渡所得に対し20.315%) |
|
給付時 | なし | なし | |
売却した枠の再利用 | できない | できる | |
他の口座との損益通算 | できない | できる | |
引き出し | 自由 | 自由 | |
利用できる人 | 20歳以上の居住者 | 原則だれでも |
- 勤務先で企業年金に加入している第2号被保険者、公務員、主婦(第3号被保険者)は、2017年1月からの制度改正以降、ご加入いただけるようになりました。
- 資産に特別法人税がかかるが、2020年まで凍結中
- 企業型は一定の条件を満たせば65歳まで加入できる。個人型は拠出に係る年齢制限。69歳11カ月までは運用継続は可能
- 2016年からの年間投資額の上限引き上げに伴い、拡大